せっかく投資信託に興味が出ても「どこで買えばいいんだろう?」「何を指針に選べばいいんだろう?」と疑問が尽きませんよね。
とくに注文に至るまでの準備・選び方について分かりづらく感じる人が多いようです。
投資信託の購入はたった2~3項目を入力して注文ボタンを押すだけで、実際には拍子抜けするほど簡単です。
順を追ってポイントを押さえれば、誰でも将来性&リスクを理解しながら投信の運用を始める事ができますよ。
投資の専門用語を分かりやすくかみ砕き、初心者でもすぐ始められるよう「投資信託の買い方」について解説します。
1. 証券口座を開設する
2. 買い方(投資スタイル)を決める
3. スペックを確認しながら投資信託を選ぶ
4. 購入単位&分配金受取方法を指定して注文する
証券口座を開設する
投資信託を始めるには、何はともあれ販売窓口を探す必要があります。
銀行・証券会社・郵便局などさまざまな金融機関で取扱いがありますが、最もおすすめできるのは「証券会社」です。
【証券会社のメリット】
- 取扱い投資信託の本数が多い
- ETF(上場投資信託)・株・外国債も運用できる
- 投資判断に欠かせないツール&情報が豊富
取扱い投資信託の本数は、銀行は100~200本・証券会社なら300~1,300本と大きく異なります。
「とにかく運用コストの安さ重視」「ハイリターンを追及したい」といったイメージにぴったりの投資信託を選ぶには、より取扱い数の多い証券会社を選ぶ必要があります。
また、資産運用の方法も選択肢が広がります。銀行は投資信託や国債しか取扱いがないところ、証券会社ではさまざまな金融商品を1口座で取引できます。
特に国内株・ETFはNISA制度の非課税対象となり、制度のメリットを最大限活用するための資産となります。
有料経済メディアの無料提供や、使いやすい取引ツール&チャネルが整っているのも、証券会社ならではの魅力です。
証券会社選びの基準
次に重要なのが、証券会社選びの判断基準です。
投資信託の運用を意識するなら「①投信の取扱い本数」「②手数料」の2点を重視しましょう。
特に、①取扱い本数のなかでもノーロードファンド(購入時手数料無料の投資信託)の本数はチェックしておく必要があります。
購入時手数料は投信買付のたびに徴収されてしまうもので、買付頻度が高くなるほど資金がムダになってしまいます。
購入時手数料3,000円が徴収され、97,000円から運用が始まる。(資金の全額を運用することが出来ない)
投信の取扱い本数・手数料の両面で優れているのは「ネット証券」と呼ばれる証券会社です。
店舗を持たずスマホやPCから取引できるタイプの証券会社で、顧客呼び込みのために商品ラインナップを充実させているのが特徴です。
対面サポートがない代わりに手数料が格安で、ロボアドによる資産運用アドバイスも普及し始めています。
おすすめのネット証券会社 | ||
---|---|---|
証券会社名 | 取扱い本数
※ノーロードファンド数 |
特徴 |
SBI証券 | 2,666本
※1,328本 |
投信取扱い本数・iDeCo運用商品数は業界トップ。
住信SBIネット銀行と連携することで、預金の自動振替機能&金利優遇あり |
楽天証券 | 2,665本
※1,353本 |
取引で楽天スーパーポイントがたまり、投資信託の買付資金として使える。
楽天銀行と連携することで、預金の自動振替機能&金利優遇&楽天会員ランクアップ |
マネックス証券 | 1,176本
※760本 |
取扱い投信の過半数がノーロードファンド。
積立による投信買付は実質ノーロード(購入手数料キャッシュバックあり) |
口座開設手続きはいずれも10分程度ですが、住所確認のための郵送物を待つ必要があるため、利用開始まで1週間~2週間ほどかかります。
待っている間に、次に紹介するポイントを押さえて投資信託の購入イメージを明確にしておきましょう。
買い方(投資スタイル)を決める
どの投資信託を買うか決める前に「どれくらいのペースで・いくら買付できるのか」という投資スタイルを明確にしましょう。
投資手法には大きく2つありますが、金融商品の知識が全くない人・元手があまりない人には下記②をおすすめします。
スタイル①周期も金額も決めず好きなタイミングで購入する(一括購入)
スタイル②一定期間ごとに決まった額で購入する(積立投資)
積立投資をおすすめする理由は「購入回数が増えるほど価格変動リスクを意識せずにカバーできる」という点にあります。
基準価格(投資信託の1口あたりの値段)が安いときは多く購入し・高いときは少なく購入することで、1口あたりの評価額を平準化することができます。
【例】スタイル①と②で投資信託Aの買付をする場合
(日付/基準価格)
4月15日/9,500円
4月30日/9,000円
5月15日/10,000円
5月31日/12,000円
6月15日/10,000円
6月30日/13,000円
タイミングを読み切れず4/15・4/30・5/31・6/15に1口ずつ買った場合、以下の計算式で利益が求められます。
保有口数:4口
取得価格の合計;9,500円+9,000円+12,000円+10,000円=40,500円
1口あたりの取得価格=10,125円
6/30時点の1口あたりの利益=13,000円-10,125円=2,075円
保有口数:6口
取得価格の合計;6万円
1口あたりの評価額=10,000円
6/30時点の1口あたりの利益=13,000円-10,000円=3,000円
いつでも確実に価格が上がりきったところで購入することが出来れば何よりですが、プロの投資家でも難しいことです。
スタイル①を続けても心理的負担が大きいばかりで、結果として通算の利益も思わしくありません。
スタイル②で積立投資はまったく心理的負担がかからず、通算利益の計算式も簡単です。
金融商品のレンジ(価格変動幅)がある程度固定されている性質を利用しているので、一定周期で購入するとプラス益がマイナス益を補ってくれます。
この手法は「ドルコスト平均法」と呼ばれ、トレーダーの間で広く浸透しているものです。
「リスクをとれるだけの資金がない」「投資知識ゼロで勉強する時間もとれない」といった人でも、毎月一定額を積み立てるように投資信託を買い付けるスタイルなら、いますぐ始めることができます。
投資信託を選ぶ
いよいよ投資信託選びに入りますが、証券会社1社あたり数百本の選択肢があります。1本ずつ総当たりで基本情報とチャートを見て選ぶのは、さすがに無理があります。
証券会社公式サイトで好みの投信を見つけるには、リスク&リターンを意識した検索条件の指定(スクリーニング)をしなければなりません。
それぞれの投資信託で吟味すべき部分は、ごく限られています。
大別して下記4項目の知識があれば、いままでまったく金融商品に触れたことのない人でも選べるようになります。
①カテゴリー:運用商品の種類&国
②運用方針:指数連動型or積極運営型
③運用コスト:購入時手数料・信託報酬・信託財産留保額
③トータルリターン:予測収益(分配益+値上がり益)
証券会社サイトでファンド検索するときは、下記早見表も活用してください。
【投資家の意識別】おすすめの投資信託カテゴリー&運用方針早見表 | |||
---|---|---|---|
投資家の意識 | カテゴリー | 運用方針 | ベンチマーク※ |
リスク重視
短期運用(1~3年) |
国内大型株・国内債券・国内REIT・海外短期債
※為替ヘッジあり |
インデックス型 | 日経平均 NYダウ NASDAQ100 東証REIT指数 |
リターン重視 長期運用(3年以上) |
国内株式・海外株式 ※為替ヘッジなし&成長株中心 海外REIT・海外ハイイールド債 ※為替ヘッジなし |
アクティブ型 | ― |
バランスよく投資したい | 国内株式・海外株式 ※大型株中心 安定資産型・均等資産型・バランス型 |
インデックス型 | 東証TOPIX S&P500 |
※ベンチマークとは:
運用方針をインデックス型とする投資信託で、値動きの連動を目指している指数のことです(詳細は後述)
①カテゴリーの選び方
投資信託はそれぞれ運用資産の種類が決められており、種類ごとにリスク&リターンレベルが異なります。
海外カテゴリーは為替・国や地域など多数のリスクが発生するため、初心者はなるべく国内カテゴリーを選びましょう。
「国内株式」カテゴリーなら、投資しながら金融市場の基礎知識・銘柄分析力を身につけることが出来ます。
NISA口座の非課税枠を生かして株取引をする際に、経験が役立ちますよ。
カテゴリーの特徴&高レーティング銘柄 | ||
---|---|---|
国内債券 | 景気の下降・金利引き下げによって評価額の上がる資産。 他カテゴリーの伸びが悪いときの損失カバーに最適 |
三菱UFJ日本国債ファンド(毎月決算型) ダイワ住宅金融支援機構債F-Mr.フラット- |
海外債券 | 短期債は値幅が少ないが、ハイイールド債はカテゴリー中トップクラスの高リスク | 野村 短期公社債ファンド第12回 欧州ハイ・イールド債券(毎月決算型) |
国内REIT | 国内の不動産投資信託を運用するタイプ。 解約時に信託財産留保額が発生するものが多い |
J-REITオープン(毎月決算型) フィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド |
国内株式 | テーマを決めて運用しているものも多く、知識に自信がなくても将来性を予測できる。 運用資産の大型株・小型株比率で大きくリスク&リターンが変わる |
ひふみ投信(アクティブ型)・たわらノーロード日経225(インデックス型) |
海外株式 | 先進国株・新興国株とも短期間の価格変動幅が広い。 決算毎に発生する分配金の利回りが良好。 初心者は指数連動型(後述)がおすすめ |
MSグローバル・プレミアム株式(H有) 米国NASDAQオープンAコース |
海外REIT | 決算毎に発生する分配金の利回りが良好。 為替変動・政治・災害など数多くのリスクがあり、運用コストも高め。 |
野村 アジアREITファンド(毎月分配型) ワールド・リート・セレクション(アジア) |
バランス型・安定資産型 | 上記各カテゴリーを横断して、運用コンセプトに合う運用資産を選ぶタイプ。 運用コストが高い。 |
eMAXIS 最適化バランス(マイストライカー) アジア・ハイブリッド・ファンド |
海外カテゴリーを選ぶ場合、先進国・新興国のどちらの資産に比重を置いているのかチェックしましょう。
先進国のほうが低リスク&低リターンで、新興国は海外資産特有のリスクが大きくなります。
「為替ヘッジあり」と記載された海外カテゴリーの投資信託は、為替変動リスクを軽減したものです。
リターンも控えめとなりますが、資金に自信のない人は積極的に選びましょう。
②「運用方針」の選び方
運用方針には、日経平均などの指数と同じ成績を目指す「インデックス型」と指数連動を意識しない「アクティブ型」があります。
それぞれメリット&デメリットをまとめると、次の通りです。
運用方針の比較 | ||
---|---|---|
運用方針 | メリット | デメリット |
インデックス型 (指数連動型) |
価格変動リスクが低い 手数料が安い (長期運用向け) |
リターンが小さい |
アクティブ型 (積極運用型) |
リターンが大きい (短期運用向け) |
価格変動リスクが高い 手数料が高い |
投資経験がない人・リスクが取れない人なら、まずはインデックス型を購入しましょう。
インデックス型は参照する指数(ベンチマーク)によって、運用商品の銘柄数が異なります。
日経平均を参照している投資信託は、採用されている225銘柄のみ運用対象となります。東証TOPIXを参照している投信なら、2,000銘柄以上の大小の銘柄を運用しています。
指数ごとに分散投資先も成績も異なるので、目論見書でチェックしておきましょう。
③「運用コスト」の選び方
実績のいい投資信託でも、手数料設定が高いと利回りが下がってしまいます。
次の3種類の手数料のうち、重要なのは「購入時手数料」と「信託報酬」です。購入時手数料が無料のノーロードファンドを中心に、信託報酬の安い投資信託を選びましょう。
購入時手数料:購入したときするときに発生。ノーロード~1%未満が理想
信託報酬:売却するまで毎日発生。1%~1.5%が平均的
信託財産留保額:売却したときに発生。0.5%前後
これらの情報は、投資信託の「目論見書」で確認できます。
インデックス型ファンドは手数料比較が重要
インデックス型の投資信託は、指数によって利回りがほぼ固定されます。
利益からコストを引いた実質的な利回りがより大きい投信を選ぶなら、手数料を慎重に比較しましょう。
④「トータルリターン」の解説&選び方
トータルリターンとは、ある期間内の「基準価格の値上がり益+分配金の合計」のことです。
手数料・税金も考慮して実質的な利回りを予測するには欠かせない数値で、6ヵ月~10年の各運用期間別に確認することが出来ます。
「明治安田-明治安田J-REIT戦略ファンド(毎月分配型)『愛称:リート王』」
引用:SBI証券(リンク)
想定している運用期間の数値を確認し、より理想に近い投資信託を選びましょう。
注文を出す
買いたい投資信託が決まったら、あとは以下の項目を決めて注文を出すだけです。
…通常は課税口座ですが、NISA制度の非課税対象にするには「NISA口座」を区分選択する必要があります。
…購入量を決めるとき、金額単位・口数単位のどちらかを指定できます。積立で投資するスタイルなら、毎回金額指定で注文しましょう。証券口座によっては、以降定期的に指定額で自動購入してくれる「積立買付」という注文方法も利用できます。
…選んだ投資信託により、年1~12回のペースで分配金を受け取ることが出来ます。現金で受け取るのを楽しみにしている投資家もいますが、おすすめは「再投資」です。
分配金でふたたび同じ投資信託を買付することで、長期資産運用の基本である複利効果が発生します。
投信購入後:運用報告書と運用残高をセットでチェックしよう
投資信託を購入すると、決算毎に「運用報告書(運用レポート)」が配布されます。報告書には、分配金や市場動向・組入資産(決算日の時点で運用している銘柄)が掲載されています。
内容を確認し、自身が運用中の残高とセットで「売却(損切り)or運用続行」の判断を下しましょう。
まとめ
投資信託の買い方は決して難しくありません。
最も難しいのは「投資信託の基本スペック・手数料・トータルリターンの予備知識」ですが、ごく簡単な項目を押さえれば初心者でもスムーズに良い商品を見分けられますよ。
①取扱い本数の多い証券会社を選ぶ
②買い方を決める(ドルコスト平均法が使える積立購入がおすすめ)
③カテゴリー/運用方針/手数料/トータルリターンから投資信託を選ぶ
④注文するときはなるべく「分配金の再投資」を指定する
ここで紹介したポイントを押さえれば、自分にあった投資信託を選ぶだけでなく「本当に投資する価値のあるものか」を見分けることも出来ますよ。
口座を開設していなくても、各証券会社の公式サイトから実際にファンドを検索することもできます。リサーチしながら買付してみたい投資信託に目星をつけておくことも、資産運用の楽しみのひとつです。
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