「投資信託」の仕組み・メリットとは?見過ごされがちなデメリット&リスクも理解を

「投資信託」の仕組み・メリットとは?見過ごされがちなデメリット&リスクも理解を 投資信託

資産形成手段のひとつ「投資信託(投信)」は、基本的な知識&目標設定だけで始められるのがメリットです。

投資家むけの税制優遇制度である“NISA制度”とセットで知名度が高く、サラリーマンや主婦でも始められる投資先として人気があります。

一方で、こんな不安を抱いたまま未だ投資信託に手を出せていない人も、多いのではないでしょうか。

「投資信託のしくみがよく分からない」

「どんな利益が出るのか、いくらから始められるのか分かりづらい」

「メリットだけでなくデメリットも知りたい」

「市場低迷や倒産よるリスクが心配」

投資経験ゼロ・これまで金融用語にすら触れたことがない人でも、投資信託について理解を深めることは十分可能です。

投信のしくみ・用語や利益の種類・知っておきたいデメリットやリスクから商品の種類にいたるまで、それぞれ分かりやすく解説します。

投資信託とは

投資信託とは、金融の専門家である「ファンドマネージャー」に資産運用を任せられる金融商品のことです。

ひとつのファンドへ投資するだけで、国内外の株・債権・金や石油など、あらゆる金融商品へ分散投資できるのが特徴です。

資金配分のリバランス(分散投資中の運用比率の見直し)もファンドマネージャーが定期的に行っており、投資家が自分で市場を読んで売買する必要はありません

投資信託を購入した後は、そのままただ保有し続けることで損益が発生し続けます

投資信託の仕組み

投資信託の運用には、ファンドマネージャーが在籍する「運用会社」が主な役割を果たします。資産管理は「信託銀行」に任されており、運用会社からの指示に従って売買取引をしています。

投資信託の仕組み

投信が購入できるのは銀行・証券会社・保険会社などですが、これらの会社はあくまでも販売窓口に過ぎません。投資信託の銘柄のなかには、運用会社が直に投資家へ向けて販売を行っているものもあります。

気になっているファンドがある場合、まずは「運用会社(委託者)」と「信託銀行(受託者)」をチェックしてみましょう。ファンドの目標や将来性分析に役立ちます。

投資信託にかかわる企業&投資家の役割
投資家(受益者) 販売会社から投資信託を購入し、分配金を受け取る。
販売会社 投資信託の販売窓口となる存在。

銀行・証券会社・保険会社など。

運用会社(委託者) 投資信託の運用を行っている会社。

ファンドマネージャーが市場を分析し、投資先や資産配分を随時決めて信託銀行に運用指図をしている。

信託銀行(受託者) 投資家の財産を預かり、運用会社の指示通りに取引・管理している会社。

【必須】投資信託の基礎用語

ファンド規模や性質・資産価値を示す4つの用語を知っておけば、投資信託について基本的な理解を得ることが出来ます。

最もよく使う用語は、株取引での時価総額・株価にあたる「純資産額」と「基準価格」です。配当益(インカムゲイン)がどのくらいの頻度で得られるかを知るには、年間の決算回数をチェックしましょう。

投資信託の購入にあたって、商品説明パンフレットである「目論見書」には必ず目を通してください。この書面には、投資判断の材料となる内容が網羅されています。

投資信託で必ず知っておきたい4つの用語
純資産額 ファンド全体の資産額。

株取引での「時価総額」にあたる

基準価格 純資産額÷総発行口数で算出した金額。

株取引での「株価」にあたる。

決算日/決算回数 ファンドが財務報告をまとめ、監査を受ける日。最低年1回は行われるが、商品によって回数が異なる。

決算を迎えると、投資家への配当である「分配金」が発生することがある。

目論見書 投資信託の説明書。

運営方針・手数料・投資先金融商品・リスク説明など、投資判断の重要な手がかりとなる情報が載っている。

利益①:分配金(※デメリットあり)

投資信託は年1~12回ほど決算が行われ、このタイミングで配当金がもらえることがあります。この配当を「分配金」とよびます。

利益がわかりやすいため楽しみにしている投資家は大勢いますが、一方で分配金が発生すると資産形成の効率が下がるというデメリットもあります。

投信ファンドの純資産額(投資家から集めたお金+ファンド全体の利益)を切り崩して配当しているからです。

この状況を言い換えると、本来は再投資でもっと増やせるお金を、分配というかたちで消費しているに過ぎません。分配回数や金額が増えれば、そのぶん資産増加スピードが遅くなるのです。

分配金がもらえる頻度(決算回数)は、運用期間と目標利回りを意識する投資家にとって、重要な判断材料となります。

利益②:売却益

投資信託を売却したとき、購入時価格の差額として利益が得られることがあります。
計算式は「売却時の基準価格-投信購入時の価格-売却にかかる諸経費」で得られます。

利益③:償還金

投資信託は、信託期間(運用期間)が決められています。
期間終了後は、投資家へ「その時点の純資産額÷総口数×各投資家が保有する口数」が償還されます。これを償還金と呼び、投資信託によるまとまった利益が入るタイミングでもあります。

「目論見書記載の信託期間が到来すれば。償還金がかならずもらえる」というわけではありません。運用会社の判断で、信託期間の途中終了または延長されることがあります。

いずれにしても、事前に償還金に関するお知らせが届きます。これが届けば、売却タイミングを見定めたり、償還金受け取り後の投資計画を立てたりすることが出来ます。

投資信託のメリット

投資信託は知識がなくてもコツコツ増やせる
投資信託は、株・債券といった定番の金融商品に触れる上で、最も手軽かつコストの低い手段です。

少額投資家向けの税優遇制度であるNISA(ニーサ)とも相性がよく、投資にありがちな「黒字収支だったのに税金で赤字になってしまった」という失敗も防げます。

一方で「もっと投資を楽しみたい」「低リスク重視の資産運用もしてみたい」と考える投資中級者にとっても、垂涎のメリットがあります。

月々100円~1万円で分散投資できる

投資信託の最低購入額は、そのほとんどが1万円程度です。
毎月一定額を口座に入れるだけでOKの「積立型投資信託」なら、月々1,000円程度から・最安で100円から始めることが出来ます。

リスクの低い現物取引を少額から始められる商品は、ほかにもあります。代表的なのは「単元未満株」や「金やプラチナ」です。しかし、こうした商品で効率的な分散投資を行おうとすると、結局さまざまな商品に資金を投じて出費がかさんでしまいます。

投資信託なら、自分が捻出できる余剰資金の範囲内で・一度商品を選んでしまえばあとは自動的に分散投資できるというメリットもあります。

ごく基本的な金融知識だけで投資をつづけられる

投資信託は「複数の金融商品+専門家による投資先の見直し」がセットになった商品です。

投資家は運用年数と目標利回りさえ決めておけばよく、市場分析や投資判断はすべて専門家が行ってくれます。

チャートの基本的な見方やよく使う投資用語など、ごく初歩的な知識だけで長期資産運用が出来るのも、投資信託の魅力です。

選択肢が豊富&マイナーな海外商品にも投資できる

投資信託の本数(種類)は、広く公開して販売されたものだけでも国内6,000本以上存在します。

それぞれに投資先の国・カテゴリー・目標利回りやコンセプトが設定されており、選択肢は限りなく豊富といっても過言ではありません。

また、海外のマイナーな投資先を含む商品があるのも魅力的です。
知名度のテーマの金融商品・新興国の債券や株は、資金を集中させて投資しようとしても、それ単体で取り扱っている証券会社はほとんどありません。

投資信託なら運用先のひとつとしてパッケージ化されており、取引できる会社を探したり市場分析したりする手間が省けます。

投資信託のデメリット

投資信託は現物取引&長期運用が前提
投資信託のデメリットとして、手数料体系が複雑であること・資産運用の効果を実感するまでに時間がかかってしまうことが挙げられます。

初期投資とランニングコストについて理解を深め、短期運用でも1~2年程度は様子を見るつもりで、腰を据えて始める必要があります。

手数料が高額&体系が複雑

投資信託の手数料には、証券口座にかかるコストを除けば5種類も存在します。運用にかかわる3つの役割(運用・資産管理・販売)をそれぞれ別の会社で担っていること、投資判断を行うファンドマネージャーへの報酬が加算されていることが原因です。

投資信託の手数料の種類
手数料の種類 発生するタイミング
購入時手数料 購入したとき
信託報酬 保有中(毎日)
信託財産留保額 解約または買取請求したとき
監査報酬 保有中(決算毎)
売買委託手数料 保有中(運用中は絶え間なく発生)

投資における手数料は、実際に投資家のもとに入る利益額に影響する要素です。
投資信託の場合、上記5種類の手数料が「どのタイミングで」「いくら」かかるのか、頭に入れておかなければならない煩雑さがあります。

長期運用でないと利益が見えづらい

投資信託はあくまでも分散投資であり、急成長中の分野に集中して投資するものではありません。

歴史的な好況がない限り、年間の実質利回り5~6%が平均的です。この水準は、株式取引を含む他の一般的な金融商品とほとんど変わりません。

投資信託で運用効果に貢献する要素は、あくまでも「プロによるリスク分散効果」と「利益の再投資(複利効果)」の2点です。

これらの利点を十分活かして利益を得るには、必然的に年単位での長期運用せざるを得ません。

とにかく早く利益を実感したい・すぐにまとまったお金を得たいと考える投資家には、あまり向いていないと言えます。

レバレッジがかけられない

投資信託の取引方法は、現物取引に限られます。
売り注文から入ることや、証拠金を預けて多額の取引をする「レバレッジ」はできません。

いま現金として手元にある分しか買付できないので、元手が何倍にもなって返ってくるような幸運は起こり得ません。

元手以上の取引が出来ないのは、投資信託の源流である富裕層向けの「ヘッジファンド」との大きな違いです。

一方でこうした仕組みは、万が一世界恐慌に巻き込まれても借金をすることはない(元手以上の損失はでない)というメリットにも繋がっています。性質をよく理解して、過度な期待をしないことが大切です。

投資信託のリスク

投資信託は元本保証ではありません。資産価値が購入時よりも下がることがあります。そのほか、商品によって異なるものの、次のようなリスクがあります。

投資信託のリスク一覧
価格変動リスク 購入時の価格が日々上下することで、資産価値が変動するリスク
為替変動リスク

※国際カテゴリーのみ

円と外貨の相場変動により、外貨建て資産の価値が変動するリスク
カントリーリスク

※国際カテゴリーのみ

その国の政治や行政・地政学上発生するリスク
信用リスク 債務不履行や一部返済不能がおきるリスク

(主に債権)

金利変動リスク 政策金利が上がったときのリスク

金利上昇:株&債権は下落

金利下降:株&債権は上昇

特定の業種のリスク 医療や技術など、それぞれのテーマが抱える特有のリスク

投信の運営&販売にかかわる会社が倒産するとどうなる?

一方で、投資信託は「運営関係企業が破産しても投資家の財産は守られる」という特徴を持ちます。販売・運用指示・資産管理のそれぞれを担う会社が破たんした場合を想定し、投資家の財産がどうなるのか紹介します。

…信託銀行が投資家の財産を管理しているため、破産の影響が及ぶことはありません。取引の窓口が別の証券会社に変わるだけです。
…販売会社と同じように、投資家の財産には影響しません。運用指示が別の運営会社に委ねられるだけです。
…信託銀行は、自己資産・投資家の財産を分別管理することが義務付けられています。したがって、投資家の財産が破産後の処理に巻き込まれることはありません。

このように投資家保護に長けた仕組みも、投資信託を選ぶ理由のひとつです。

投資信託の種類(カテゴリー)

投資信託は、商品ごとに「どんなカテゴリーの金融商品を運用するか」が決まっています。

株式カテゴリーのものは「株式投資信託」・債権カテゴリーのものは「公社債投資信託」と区別されており、それぞれ国内・国債でさらに細分化されます。

比例関係にあるリスクとリターンも、カテゴリー別に異なります。

投資信託の種類【リスク&リターンが低い順】
①国内債券型
②国際債券型
③国内株式型
④国際株式型
番外:バランス型…①~④へまんべんなく投資

参考:モーニングスターの投資信託ファンド詳細ページ(リンク
投資信託商品の「種類・カテゴリー」の一例
…右上の「カテゴリー」と書かれているのが、運用対象となる金融商品の種類を示しています。みずほUSハイイールドB(H無)の場合、②国際債券型であることが分かります。

幅広い種類のなかから自分にあった商品を選べるのも、投資信託の楽しみのひとつです。

国際運用を行うタイプの投資信託なら、投資先が先進国か・新興国かによってリスク&リターンレベルも変化します。

なかには「急成長企業応援ファンド」や「AI技術支援」など、テーマだけ決めてカテゴリーを横断して運用している商品も存在します。

リスクを重視するなら「インデックスファンド」がおすすめ

リスクが気になる投資初心者には「インデックスファンド」と呼ばれる設計の投資信託をおすすめします。

インデックスファンドは「指標連動型」とも呼ばれており、日経平均・ダウ平均などの「指標」に沿って値動きするように設計されています。

利回りは低いものの、市場の成長に合わせて大きな混乱なく資産形成できるのがメリットです。

インデックスファンドの対義語である「アクティブファンド」は、指標を無視して成長の期待できる商品で運用されています。

より短期間で実感できる利益を得たい人にはおすすめできますが、手数料が高額・元本割れリスクが高くなるといったデメリットがあります。

投資経験のある人ならアクティブファンドのほうが効率的と感じられますが、経験ゼロで始めるのであれば最初の一本はインデックスファンドにしておきましょう。

投資信託が買える場所

投資信託は、証券会社・銀行・保険会社・郵便局(ゆうちょ銀行)の各社で購入できます。このうち最もおすすめできるのは、投資に特化している「証券会社」です。

投資信託の取扱い数が豊富で、NISA口座の非課税枠を生かして株やETF(上場投資信託)でも資産運用ができますよ。

おすすめの証券会社TOP3

証券会社といえば「野村證券」「大和証券」といった店舗数の多い企業が思い浮かびますが、無店舗型の「ネット証券」がおすすめです。

下記のように、コスト・取引手段ともに様々なメリットがあります。

ネット証券のメリット

  • 口座開設も取引もスマホ&PCから気軽にできる
  • 投資信託の取扱い本数が多い
  • 取引手数料が安い&入出金方法が豊富
  • 担当者からの断りづらい商品勧誘がない

対面による懇切丁寧なサポートこそないものの、そのぶん手数料の安さ・ネット取引の利便性を注力できているのが、ネット証券の特徴です。

独自の優遇サービスを設けている会社も多く、日常のショッピングやコンビニATM利用時まで恩恵を受けられることがあります。

1位:SBI証券

SBI証券で投資信託を始めるメリット

投資信託の取扱い本数は業界No.1・100円から積立投資できる人気証券会社です。表彰歴のあるファンドから新興の注目ファンドまで一通りそろっているため、投資信託を学ぶなら最初に口座開設しておきたい会社でもあります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の対象投資信託も87本あり、うち元本保証型は4本と業界最多です。住信SBIネット銀行の口座と組み合わせることで、運用コストを下げて安定資産を築くことが出来ます。

SBI証券のメリット

  • 投信取扱い本数No.1(2019年4月現在)
  • iDeCo対象投資信託数も業界トップクラス
  • 住信SBIネット銀行口座との連携で優遇あり

SBI証券は、投資信託のほかに外国株・債権の銘柄数も業界最多クラスです。NISA口座なら株取引手数料の一部が無料(国内株売買・外国株買付)で、10カ国以上の銘柄を運用しながら効率よく資産形成できます。

2位:楽天証券

楽天証券で投資信託を始めるメリット

投信取扱い本数は業界最多のSBI証券と同水準で、100円から積立できる点も他にはないネット証券ならではの特徴のひとつです。

外国株や債券の取扱数はSBI証券に劣りますが、楽天系のサービスを利用する場合に本領を発揮します。取引で楽天スーパーポイントが付与されるのは、他の証券会社にはない特徴です。

楽天銀行口座と連携させれば、ランクアップによりポイント還元率・ATM利用と振込手数料無料回数が優遇され、ますますお得に利用できます。

楽天証券のメリット

  • 投信取り扱い数トップクラス(2019年4月現在)
  • 100円/月から積立投信できる
  • 取引すると楽天スーパーポイントが貯まる
  • 楽天銀行との口座連携でポイント還元率アップ&ランクアップ

3位:マネックス証券

マネックス証券で投資信託を始めるメリット

1,000件以上の投資信託を扱うマネックス証券は、そのほとんど(760件)がノーロードファンド(購入手数料無料)です。

特に力が入っているのは、NISA口座利用者に対する優遇です。

国内株式の売買手数料・外国株の買付手数料が無料になることに加えて、積立で投資信託を買付すると購入時手数料をキャッシュバック(実質全銘柄ノーロード)という太っ腹ぶりがメリットです。

マネックス証券のメリット

  • ノーロードファンド中心の投信ラインナップ
  • 100円/月から積立投信できる&NISA口座で実質ノーロード
  • NISA口座で株式売買手数料が一部無料になる

まとめ

投資信託なら、商品をひとつ選んで購入するだけで「売買取引&運用バランスの見直し」のすべてを専門家にお任せできます。

月々1万円程度の少額から始められて、投資慣れしている人でも手を出しづらい「マイナーな急成長商品」もパッケージされていることも魅力的です。。

一方で、投資信託を始める上では次のことも理解しておく必要があるでしょう。

投資信託を始める上で知っておきたいこと

  • 購入時&保有中に、計5種類の手数料がかかる
  • 決算回数(分配の頻度)が多いほど運用効率がさがる
  • 手持ち資金での長期運用が前提

為替や金利などのリスクも、商品の目論見書を読んで理解を深めておく必要があります。
一方で、投資信託の運営に関わる企業が倒産しても、そのリスクを引き受けることはありません。分別管理が徹底されており、投資家の資産はしっかり守られます。

投資信託は、コンセプトも運用先も違う多数の商品から選ぶことが出来ます。自分に合った証券会社に口座開設したあとは、目的&リスク許容度に合わせた商品選びを始めてみましょう。

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