投資信託の利回りとは?カテゴリー別利回り目安&ファンド比較の必須知識まとめ

投資信託の利回りとは?カテゴリー別利回り目安&ファンド比較の必須知識まとめ 投資信託

利回りをチェックしながら投資信託を選びたいと思っても、ファンド詳細ページにある「トータルリターン」や「騰落率」のどれを参考にすればいいのか分かりづらいですよね。

投資経験の有無に関わらず、投信の平均的な利回り目安も知っておきたいものです。

投資信託の利回りについて理解するには、利益の種類や専門用語について事前知識を得る必要があります。

その後、ファンドの比較方法や利回り目安について学ぶことで、投資上級者にも負けない高精度な投資信託選びが出来ますよ。

この記事を読み終えた段階で誰でもすぐ銘柄分析を始められるよう、投資信託の利回りについて徹底解説します。

投資信託の利益の種類&用語を理解しておこう

投資信託の利回りを構成する運用益には、売却益(値上がり益)・分配金の2種類があります。

ほとんどのファンドは売却益を最重要視していますが、分配金を楽しみにしている投資家を意識して運用しているファンドも多く存在します。

【投資信託の利益の種類】

①売却益(値上がり益)
購入時と売却時の基準価額の差で、投資信託を手放した時に初めて現金で得られる利益のことです。

②分配金
運用コンセプトに沿って、年1~12回の決算の度に現金でもらえる利益です。ファンドの収益が芳しくないときなど、状況により分配されないこともあります。
日本人投資家には分配金を楽しみにしている人が多く、世界的に見ても日本の投資信託には「毎月分配型」が多い傾向があります。

トータルリターンと騰落率の違い

実際に証券会社のファンド詳細ページを開くと、利回りを示す用語として「トータルリターン」と「基準価額の騰落率」が別々に表示されています。

どちらを重視すべきか悩みますが、利益全体を見渡せる「トータルリターン」を目安に比較検討を行いましょう。

両者には次のような違いがあり、騰落率だけではファンドの将来性に関わる情報が把握できないからです。

【投資信託の利回りに関係する用語】

基準価額の騰落率:基準価格の変動率を示したもの(値上がり益しか分からない)
トータルリターン:基準価格の変動率+分配金利回りを示すもの(値上がり益+分配金の合計が分かる)

基準価額とは単に「ファンド全体の資産(純資産額)÷発行口数」で計算されたものです。

騰落率に関わる要素はファンドの運用実績だけではなく、分配金・監査報酬・運用資産の売買手数料など、ごく当たり前に発生するコストも含まれます。

基準価格のチャートだけでは、投資家からの評価や運用会社の腕前について推量することが出来ません。

 

騰落率とトータルリターンの違いとは

投資信託で得られる2種類の利益の合計を知るなら、利回り=トータルリターンであることを前提にファンド選びを進める必要があります。

表面利回り(トータルリターン)と実質利回りの違いに注意

トータルリターンは、運用中にかかる手数料や税金を計算に含めていません。

これを表面利回りと呼ぶのに対し、各コストを含めて計算しなおしたものを「実質利回り(実際に手元に残る利益)」と呼びます。

トータルリターンが似ている投資信託同士を比べると、運用コストの差で実質利回りに差が出ている場合があります。

気になる投資信託を見つけたら、目論見書や証券会社の検索機能を使って各種運用コストを確認しておきましょう。

投資信託の実質利回りの計算に必要な「運用コスト」一覧
運用コスト 掲載場所または税率 発生タイミング
①購入時手数料 目論見書 投資信託の買付時に発生
②信託報酬 目論見書 運用中、決算ごとに発生
③信託財産留保額 目論見書 投資信託を解約または売却したときに発生
④監査報酬 運用報告書 運用会社が監査法人に対して支払う報酬
⑤売買委託手数料 運用報告書 ファンドが運用資産の取引をするたびに発生する報酬
⑥税金 20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%・住民税5%)
引用:国税庁(リンク
毎年1/1~12/31の運用益に対して発生
(NISA制度適用範囲内であれば、税金は発生しない)

①~③は目論見書や証券会社のファンド詳細ページで確認することが出来ます。

④と⑤は事前に予測できないコストであるため、決算毎に発表される運用報告書で確認します。とはいえ、合計年率0.2%程度のわずかな額です。

 

投資信託の運用コストの確認方法

…「ニッセイ日経225インデックスファンド」の目論見書より

運用コストとして考えられるものには、毎年1月~12月の運用益をもとに徴収される税金も含まれます。

投資信託の利回り比較は「カテゴリーと期間」ごとに行う

利回りで投資信託を選ぶ際は、運用資産カテゴリー・運用期間ごとに同一のファンドを比較対象にしましょう。

運用資産の違うファンド同士で利回りを比較しても、どちらが優れているのか評価することは出来ません。資産の性格やリスクが違えば、値動きの傾向も全く異なるからです。

運用年数についても同様です。期間ごとの目標はファンドによって様々で、同一の投資信託でも売却予定時期により利回りに差がでます。

自分のリスク許容度・資産運用の目的にマッチするファンドを見つけるために、同じ傾向をもつ投資信託同士で利回りを比べる必要があります。

投資信託の利回りの目安

投資信託の利回りは運用期間に合わせて上昇し、1年保有すると7~8%程度・3年保有した場合は10~15%が平均的です。

下記の表では、運用資産カテゴリー・運用年数に加えてリスクレベルも併記しています。

投資信託の利回りの目安
運用資産カテゴリー リスクレベル 6ヵ月 1年 3年
国際REIT 6~7% 20~26% 6~7%
国際株式 中~高 8~10% 15~20% 15~20%
国内REIT 中~高 8~10% 13~15% 5~6%
国内株式 中~高 5~7% 8~10% 9~12%
国際債券 低~中 5~7% 6~8% 6~8%
国内債券 1~3% 1~3% 1~3%

※上記表はSBI証券で扱うファンド一覧を元に、2019年4月時点で作成したものです。

国際カテゴリーはさらに「先進国」「新興国」の2つに細分化することができ、新興国向け投資がメインのファンドは更にハイリスク&ハイリターンです。

運用期間に応じて大幅成長が見込めるのは株式カテゴリーです。

分配金メインのREIT(不動産投資信託)カテゴリー・為替差益がないと運用効率が悪い債券カテゴリーは、安定的な運用に向いています。

各カテゴリーの平均利回り・リスクレベルから傾向をまとめると、次の通りです。

【低リスク資産】
価格変動が少なく、保有期間が長くなるほど運用効率が悪い。安定性を生かし、1~3年の運用で堅実に利益を得たい人におすすめ。該当するカテゴリー:国内株式、国際債券、国内株式(大型株投資/インデックス型)、国内REIT
【高リスク資産】
価格変動が大きく、長期保有しないと損益がプラスになりにくい。成長性を生かし、3年以上の長期資産形成を視野に入れている人におすすめ。該当するカテゴリー:国内株式(成長株投資/積極運用型)、国際株式、国際REIT

※資産カテゴリーの性質を組み合わせた「バランス型」「安定型」と呼ばれる投資信託もあります。

「分配金利回り」で判断するのはNG!リスクは低減されるが運用効率は悪い

投資信託で得られる分配金には「投信を売却しなくてもキャッシュで利益が確保できる」というメリットがあります。

先進国株式や国際REITカテゴリーでは分配金利回りの高いファンドが多く揃っており、興味を持つ人も多いのではないでしょうか。

一方で、分配頻度や利回りの高さには「ファンドの運用効率が悪くなる=基準価額が伸びにくい」というデメリットがあることも見逃せません。

運用会社からの分配は純資産を切り崩しておこなわれているからです。

 

投資信託でもらえる分配金のメリット&デメリット

…赤い矢印は分配が行われた日を示しています。基準価格が下がっていることが分かります。

結果として、分配金が多いほどファンドが再投資に使える資金が減ってしまいます。

値上がり益重視で効率よく運用してもらうなら、分配回数の少ないタイプの投資信託を選びましょう。

インデックス型ファンドは運用コスト最重視で選ぶ

指標連動型と呼ばれるインデックス型ファンドは、基準価額チャートの連動を目指す指標(ベンチマーク)ごとに利回りがほぼ固定されています。

実質利回りに差をつけるものは「運用コスト」しかありません。

インデックス型ファンドを比較検討する際は、同一カテゴリーかつ同一ベンチマークのものを運用コストの安さで比較しましょう。

手元に残る利益「実質利回り」の計算方法

トータルリターンの良いファンドだからといって、必ずしも十分な利益が得られるとは限りません。

ファンドごとに決められた運用コストが発生するため、利回りがよくても手元に残る運用益は限られています。

利益からコストと税金を差し引いた「実質利回り」の計算方法を知り、投資信託選びの際に活用できるようにしておきましょう。

【実質利回りの計算方法】
実質利回り=(トータルリターン-運用コスト)÷投信購入時の価格×運用年数×100
※積立で購入する場合は、積み立てるたびに上記の計算式を繰り返して求める

より正確に利回り比較するためのチェック項目

カテゴリーと運用期間で投資信託を絞り込み、トータルリターンも運用コストも近似値のファンドを見つけたなら、一歩進んで「純資産額推移」と「シャープレシオ」も比較してみましょう。

どれが優秀なファンドか、さらに正確に見極めることが出来ます。

「純資産額推移」で直近の運用状況の判断を

投資信託の購入前~運用中は、純資産額推移をチェックしておきましょう。

純資産額の増加傾向は「運用会社の実績が良好=今後利回りが上昇する」ととらえることが出来ます。

反対に減少傾向にあると、当初予測していた利回りを達成できない可能性が高まっている状態です。

純資産額推移がずっとマイナスに動いている場合、売却して別の投資信託を購入することも検討しましょう。

「シャープレシオ」でリスク込みの利益率が分かる

主要証券会社や投資信託の格付けサイト等では、一歩進んで「リスクに対するリターン率」という観点でも利回りが計算されています。

この計算結果をシャープレシオと呼び、値が大きいほど運用効率のよい優秀なファンドです。

シャープレシオ
=(ファンド全体の利回り-うち無リスク資産の利回り)÷標準偏差※

標準偏差とは…資産価値変動の振れ幅のこと。「リスク20%」と書かれている場合、-20%~+20%の間で変動する。

シャープレシオが役に立つのは、アクティブ型ファンドと呼ばれる成長性重視の投資信託です。

組入れ銘柄にそれぞれ個性があり、リスクをとる見返り(=運用効率)も大きく異なります。

値上がり益狙いの投資信託選びで迷った場合、シャープレシオで比較してみましょう。

まとめ

投資信託には「売却益(値上がり益)」「分配益」という2種類の利益があります。

得られる利益を組み合わせたものが「トータルリターン」という指標で、利回りを確認して比較検討するときに重要です。

ほかにも、投資信託の利回りを理解する上で重要なポイントがあります。

【投資信託の利回りを確認&比較するときのポイント】

  • 騰落率ではなくトータルリターンを重視する
  • 表面利回り(トータルリターン)だけでなく、コストを含めた「実質利回り」にも注意する
  • 分配金利回りの高いファンドは魅力的だが、運用効率が下がるデメリットもある
  • よく似たファンドで悩んだら「純資産額推移」「シャープレシオ」で将来性を分析する

これらのポイントを押さえておけば「高利回りファンドが沢山あってどれを選べば分からない」という場面も、投資上級者と同じように分析で切り抜けることが出来ます。

さっそく次の買付に役立ててみましょう。

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